TVサウンドシェアの試作品では、
テレビの音をスピーカーとイヤホンの
両方から同時に出すことができました。
最初の目標だった、
「家族はテレビの音を聞きながら、聞こえにくい方はイヤホンで
自分に合った音量で聞く。」
という考えを、実際に音が出る形で確かめることができました。
しかし、最近あらためて考えていることがあります。
それは、
「音が出れば、それで製品になるわけではない。」
ということです。
試作品は、自分で作ったものです。
どこに何がつながっているかも分かっています。
操作方法も、自分では分かっています。
でも、製品になれば初めて見る方が使います。
箱から出して、テレビにつないで、毎日の生活の中で
使っていただくことになります。
そのときに、
「これはどこにつなぐのだろう。」
「どのつまみを回せばいいのだろう。」
と迷うようでは、使いやすい製品とは言えません。
特にTVサウンドシェアは、年齢を重ねた方にも使っていただく可能性があります。
だから私は、難しい操作を増やしたくありません。
電源を入れる。
テレビにつなぐ。
イヤホンをつなぐ。
そして、自分にちょうどいい音量にする。
できるだけ、それだけで使えるものにしたいと思っています。
そこで今、私が考えているのが「つまみ」です。
画面の中に小さな数字を表示して調節するよりも、
手でつまんで回せるダイヤル式の方が分かりやすいのではないか。
スピーカーの音量も、イヤホンの音量も、
それぞれ手元で調節できた方が使いやすいのではないか。
そんなことを考えています。
これは、とても小さなことに見えるかもしれません。
でも、毎日使う道具では、この小さな違いが大切なのではないでしょうか。
私は長い間、商業デザインの仕事をしてきました。
その中で感じてきたのは、
「見た目がきれいなだけでは、良いデザインではない。」
ということです。
何のためのものなのか。
誰が使うのか。
どうすれば迷わず使えるのか。
それを考えることも、デザインの大切な役割です。
TVサウンドシェアについても同じだと思っています。
専門的な電子回路については、専門家の力が必要です。
基板を作ることも、ケースを作ることも、
私一人ではできません。
しかし、
「こんなふうに使えたら便利なのではないか。」
「この位置につまみがあった方が分かりやすいのではないか。」
という、使う人の立場からの考えは出すことができます。
試作品が動いた。
その次は、使いやすくする。
そして、安心して使える製品に近づけていく。
今は、その段階に来ているのだと思います。
TVサウンドシェアは、 ただ音を二つに分けるためだけの装置ではありません。
聞こえ方が違う家族が、 同じテレビを一緒に楽しむための道具です。
だからこそ、機械が得意な人だけが使えるものではなく、
誰でも分かりやすく使えるものにしたい。
これから製品化を考えていく中でも、
この「使いやすさ」を忘れずに進めていきたいと思います。
まだ試作品です。
でも、試作品だからこそ、 今ならいろいろ考え、
変えることができます。
一つずつ考えながら、 本当に使っていただける形を目指します。