若い頃には、何でもなかったこと。
それが年齢を重ねるにつれて、少しずつ変わっていくことがあります。
テレビの音も、その一つかもしれません。
以前と同じ音量では、会話が聞き取りにくくなった。
ニュースを見ていても、言葉の一部が分かりにくい。
だから、リモコンで少し音量を上げる。
本人にとっては、それだけのことです。
ところが、一緒にテレビを見ている家族からすると、
「ちょっと音が大きい。」
ということになります。
さらに音量を上げれば、
「もう少し下げてくれない?」
と言われる。
そこで音量を下げると、今度は本人が聞き取れない。
これは、どちらかがわがままを言っているわけではありません。
聞こえ方が違うのです。
私は、この問題を考えているうちに、
「これから、同じようなことで困る家庭はもっと増えるのではないだろうか。」
と思うようになりました。
高齢になっても、家族と一緒に暮らしている方はたくさんいます。
夫婦二人でテレビを見ることもあります。
親と子で見ることもあります。
お孫さんと一緒に見ることもあるでしょう。
そのとき、全員の聞こえ方が同じとは限りません。
だから私は、
「全員を一つの音量に合わせるのではなく、それぞれに音量を合わせればいい。」
と考えました。
家族はテレビのスピーカーから、いつもの音量で聞く。
聞こえにくい方は、イヤホンから自分に合った音量で聞く。
それを同時にできるようにする。
それが「TVサウンドシェア」の基本的な考えです。
私は、この製品を特別な機械にはしたくありません。
毎日の暮らしの中で、普通に使える道具にしたいと思っています。
テレビを見るたびに複雑な設定をする。
たくさんのボタンを操作する。
説明書を何度も読まなければ使えない。
そういうものではなく、
「つないで、音量を合わせて、テレビを見る。」
できるだけ、それくらい分かりやすいものにしたい。
なぜなら、毎日使うものほど、簡単であることが大切だと思うからです。
長年、商業デザインの仕事をしてきた中でも、
私は「使う人の立場で考える」ことを大切にしてきました。
見た目が格好いいだけでは、良いものとは言えません。
分かりやすいこと。
使いやすいこと。
そして、使う人が困らないこと。
TVサウンドシェアにも、その考えを生かしたいと思っています。
年齢を重ねることは、誰にでも起こることです。
聞こえ方が変わることも、決して特別なことではありません。
だからこそ、それに合わせて暮らしの道具も変わっていけばいい。
私はそう思います。
聞こえ方が変わっても、家族との時間まであきらめなくていい。
同じテレビを見て、同じ場面で笑って、同じニュースについて話をする。
そんな普通の時間を守るための小さな道具。
TVサウンドシェアを、そんな製品に育てていきたいと思っています。
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