同じ部屋で、同じテレビを見ている。
だから、同じ音量を聞く。
これまで私は、それが当たり前だと思っていました。
しかし、よく考えてみると、人の聞こえ方は一人ひとり違います。
特に年齢を重ねると、その違いは少しずつ大きくなっていきます。
ある人にはちょうどいい音量でも、別の人には小さくて聞き取りにくい。
逆に、聞こえにくい人に合わせて音量を上げると、ほかの家族には大きすぎる。
これは、どちらかが悪いという問題ではありません。
聞こえ方が違うのですから、本当は音量もそれぞれ違っていていいはずです。
そう考えたことが、「TVサウンドシェア」の発想につながりました。
家族はテレビのスピーカーから普通の音量で聞く。
聞こえにくい方は、イヤホンから自分に必要な音量で聞く。
そして、それぞれの音量を別々に調節できるようにする。
「一つのテレビだから、音量も一つ。」
その当たり前を少し変えてみようと思ったのです。
私は長年、商業デザインの仕事をしてきました。
デザインの仕事では、何かを作る前に、
「本当にこれでいいのだろうか。」
と考えることがよくあります。
昔からそうしているから。
みんながそうしているから。
それだけで決めてしまわず、一度違う方向から考えてみる。
すると、意外なところに解決のヒントが見つかることがあります。
TVサウンドシェアも、まさにそうでした。
「テレビの音量は一つ」という考えから離れてみたら、
「それなら、人ごとに音量を分ければいいのではないか。」
という考えにたどり着きました。
考えるだけなら簡単です。
しかし、それを実際に使えるものにするには、試してみなければ分かりません。
そこで市販の部品を組み合わせ、試作品を作りました。
テレビにつなぎ、スピーカーとイヤホンの両方から音を出してみる。
さらに、それぞれの音量を調節してみる。
一つずつ確かめながら、少しずつ今の形に近づいてきました。
まだ完成した製品ではありません。
ここから本当の製品にするためには、専門的な技術や製造の力も必要になります。
だからこそ現在、CAMPFIREでこの取り組みを多くの方に
知っていただきながら、製品化への道を探しています。
私は80代です。
若い頃なら、もっと早くできたこともあるかもしれません。
それでも今だからこそ気づける「暮らしの中の困りごと」もあると思っています。
年齢を理由にあきらめるのではなく、気づいたことを形にしてみる。
TVサウンドシェアは、そんな私自身の挑戦でもあります。
「家族全員が同じ音量に合わせる」のではなく、
「音量を一人ひとりに合わせる」。
そんなテレビの楽しみ方が、ごく普通になる日が
来たら嬉しいと思っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿